
4月25日(金)・26日(土)の二日間、and Beyondカンパニー(以下aBC)は、「Beyondカンファレンス2025」を兵庫県淡路島全土にて開催しました。
▲Beyondカンファレンス2025ダイジェスト動画
1.Beyondカンファレンスとは?
Beyondカンファレンスは、持続可能な社会とWell-Beingを模索する企業や大学、NPOが、業界や事業規模の違いを超えて連携・協働を推進するために、aBCが年一回提供しているユニークな場です。
第4回目となる今回は、「研ぎ澄ます」がコンセプト。
古事記に記されている国生みの地・淡路島を会場に二日間で延べ370名の方が集い、新しい出会いと共創の種が数多く生まれました。
<開催概要>
- タイトル:第4回Beyondカンファレンス2025
- 日時:4月25日(金)~26日(土)
- サイト:https://etic.or.jp/event/5938/
- 主催:and Beyond カンパニー(参画企業・団体は以下)
アビームコンサルティング株式会社、江崎グリコ株式会社、ENEOSリニューアブル・エナジー株式会社、セイノーホールディングス株式会社、東京海上日動火災保険株式会社、日本航空株式会社、日本郵政株式会社、株式会社日立製作所、マネックスグループ株式会社、株式会社ミズ、株式会社YUIDEA、ロート製薬株式会社、NPO法人ETIC. - 共催:淡路ラボ
- 後援:兵庫県淡路県民局
- 協力:一般社団法人UMF、株式会社電通PRコンサルティング
2.DAY1:4月25日(金)~個の想いを研ぎ澄ます/個と個で繋がる~
▲オープニングセッション ウスビ・サコ氏の講演
最初に、淡路夢舞台国際会議場でオープニングセッションが行われました。一般社団法人SackOmi理事長/京都精華大学元学長・名誉教授/東京都公立大学法人理事のウスビ・サコ氏が「モラルエコノミーと内発的発展 ~『つくれる社会』から『つくりたい社会』へ」と題して講演。祖国マリ共和国を含むアフリカ諸国が欧州という外部の視点捉えられてきた歴史に触れ、一極集中、大規模経済では幸せな世界をつくれないことが自明の今、地域に根差した文化を大切に、お互いの違いを受け止め合って生きていく多様性と包摂性が重要であることを説きました。その上で、「これからのよりよい社会をつくるのは、次世代人材の主体性とそれを支える大人が大切。勇気を持って自分の『問い』を立ててほしい」と参加者にエールを送りました。
▲4台のバスで各エリアに出発!
続いて行われたフィールドダイアログでは、参加者は淡路市エリア、釜口・佐野エリア、洲本市街地・由良エリア、洲本市五色エリアに移動し12のグループに分かれて、それぞれのフィールドで「食・農業」「サステナビリティ」「防災」「教育」「伝統文化・暮らし」「越境」等、多様なテーマに取り組む現地プレイヤーの元を訪れました。プレイヤーの話や現地での体験をきっかけとして、参加者それぞれが感じたことや想いを車座になって対話しました。
その中からいくつかご紹介します。
▲グループ6のフィールドワークにて
グループ6は、「藍染の持つ「微生物の力」を引き出す技術を体感しながら考える、自然と人との繋がり」をテーマに淡路市で「Awaji 藍LAND project」を主催する根岸誠一さんを訪ねました。畑や蔵を見せていただきながら、無農薬有機肥料で育てた藍草を発酵・熟成した「すくも」を伝統的な技法で発酵させて染料をつくって染色する過程をご紹介いただきました。参加者13名は、工房で実際に藍染を体験した後、海を見下ろす2階で車座になって語り合いました。藍と向き合い微生物の力を引き出すことで、人間がコントロールできない自然と折り合いをつけて生活している根岸さんの在り方に触れ、参加者それぞれが自然との関わりにも目を向ける時間となりました。障害者事業所との商品開発、地元の小学生への体験授業の提供等、地域との協働を大切にしてきた根岸さんの活動を持続的なものにしていくためのアイディアも参加者から出てきました。
▲グループ9のフィールドワークにて
グループ9は、「観光地ではないまちの、暮らす人の視点を伝えるまちあるきツアー。あなたなら地元の良さをどう伝えますか?」をテーマに洲本市の由良エリアを歩きました。企画した「ユラカンコウキョク」は、中学時代の同級生によるグループです。名古屋芸術大学の学生と発行しているフリーペーパー「ゆらより」を手に江戸時代以前から街区が変わっていない路地を歩きながら、1000年以上の歴史があるという由良湊神社へ。ユラカンコウキョクの落合典子さんは、この神社の宮司の家に生まれ、今は奈良市と由良で二地域居住をしています。神社から少し歩くとかつて遊郭だった場所があり、船着場には廃漁船が放置されているものの、海水は澄んでいます。「ここをきれいにして屋形船を出したいんです」と落合さんは語りました。その後、渡船で目の前の無人島の成ヶ島に渡り、芝生の上で車座になって、海と山と歴史あるまちをどのように盛り上げていけるのかを語りました。
▲グループ2のフィールドワークにて
▲グループ5のフィールドワークにて
他にも、耕作放棄地を再生し一棟貸イチゴハウスというユニークな取り組みをする農家、純国産鶏にこだわりながら発酵鶏糞を活用した地域循環型事業を営む養鶏家、島原種の鳴門オレンジを栽培して付加価値を探っている方、複合施「ei-to」でサスティナブルなものづくりに取り組む方、島内外からよろず相談を受けながら交流のハブ拠点を担っている方等さまざまな訪問先がありました。
▲交流会(バーベキュー)の様子
フィールドダイアログの後は4エリアごとに、豊富な地元の食材を囲んでのネットワーキング&交流会が開かれました。すっかり打ち解け合った参加者は、自分の想いや活動、一日目に感じたことなどを時が過ぎるのを忘れて語り合いました。
▲交流会後のバス車内にて
3.DAY2:4月26日(土)~かき混ざり創発する~
二日目は淡路夢舞台国際会議場に集結しました。
3会場に分かれ各3ターム計9のインプットセッションでは、各テーマの実践者から最新事例や構想が紹介されました。
休憩・ランチタイムを挟んで行われた2ターム計9の渦潮(共創)セッションでは、インプットセッションでの内容を踏まえた上でさらに視野を広げた上で、今後の取り組みについての参加者も交えた作戦会議が行われました。
▲インプットセッション「阪神淡路大震災から30年、企業が市民社会の中で担う役割とは何か」
「阪神淡路大震災から30年、企業が市民社会の中で担う役割とは何か」には、株式会社雨風太陽 代表取締役・高橋博之氏、株式会社御祓川 代表取締役/一般社団法人能登復興ネットワーク事務局長の森山奈美氏、淡路ラボ代表の山中昌幸氏が登壇。3人は東北、能登、淡路で、都市や地域外から人や企業を呼び込み、深い関係づくりを行っています。
山中氏は、阪神淡路大震災について「北淡震災記念公園野島断層保存館の館長から『阪神淡路大震災では、島の消防団が消防士より先に動いた。どの家のどの部屋におばあちゃんが寝ているのかわかっていたからすぐに助けられたんだ』と共助の大切さを聞いた」
高橋氏は、2011年の東日本大震災について「国力低下の成熟社会の中で、過疎地の三陸沿岸で起きた。34億円の復興予算を投じたが現在も課題先進地だ。一方で東北が、都市に食べ物、エネルギー、人材を供給してきた場所であることを気づかせた。東北復興に訪れた人がこの地の豊かさに気づき関係人口となることは未来に繋がる希望だったが10年で途絶えつつある」と述べました。
2011年の東北地方の高齢化率は30%以下だったのに対し、2024年の能登半島の高齢化率はは50%を超えていました。
森山氏は2024年の能登半島地震から今までと今後について「地震から1年数ヶ月経ち、ここから復興という今、助ける側と助けられる側の人が混在していることにつらさを感じている。復興への取り組みが始まっているが、震災前からつながっていた人の取り組みが複数ある。東北の右腕派遣の仕組みが人材不足に生きた。高橋さんからは『復興の道筋は自分たちでグリップせよ』と言われ、自分たちの力が問われていると感じている。助ける助けられるだけじゃなく、一緒に未来をつくる共創パートナーをつくっていきたい」と今日のセッションへの期待を語りました。
モデレーターのETIC.山内は、「関係人口という言葉が生まれ、企業が動いた東日本大震災、その後、地方創生で企業も地域と関わりを模索している。地域おこし協力隊の増加もある。能登では、以前からつながっていた人や企業の動きが早く、関与も深いものだった。南海トラフに向けて淡路では」という問いに山中氏は「淡路市の高齢化率は40%、消防団も減っている。有事の際は、外からの支援を受ける現地側のコーディネートが大変なのはわかっている。私がやる覚悟はしている。皆さんは私とつながっていてほしい」と答えた。それを受けて高橋氏は「平飼いの鶏は健康的に育ち、過密なケージの鶏はストレスフル。これは社会の構造と同じ。世界最大の都市東京の人のQOLを考えると、都市の人にこそ農山漁村は必要。後のセッションで企業の皆さんと考えたい。」と述べました。
▲渦潮セッション「『地域に根づく拠点・コミュニティ』×『企業リソース』で考える“地域の安心な暮らしを支える、新しいインフラの形”」
「『地域に根づく拠点・コミュニティ』×『企業リソース』で考える“地域の安心な暮らしを支える、新しいインフラの形”」のインプットセッションでは、NPO法人ETIC.ローカルベンチャー事業部 伊藤いずみ氏が、少子高齢化、都市への一極集中多様な社会課題の複雑化により、地域の暮らしを支えるのには、行政だけではなく地域内外の新しい担い手が必要になっていることを指摘。その上で地域にネットワークを持つ大企業・組織の取り組みが紹介されました。
日本郵政株式会社 地域共創事業部 多田進也氏は、「ローカル共創イニシアティブ(LCI)」で生まれた共助型買物サービスや営農広域組織事務局サポート、地域共創NFTプロジェクトについて説明。「全国でユニバーサル・サービスが義務付けられている日本郵政は収益性が見込めない地域でもサービスを維持しなければなりません。地域に既にリソースを持っているので、可視化されていない地域のマーケットを顕在化させるローカルベンチャー企業と連携して事業を生み出すことができれば、win-winの関係になります」とプロジェクトの意義を語りました。
日本生活協同組合連合会 組織推進本部 社会・地域活動推進部 地域コミュニティグループ 前田昌宏氏は、生協の成り立ちや行政との包括連携協定を締結していることを紹介。「全国3,063万人の組合員を持つ共助の仕組みとして、安心して暮らし続けられる地域社会に貢献していきたい」と意気込みを語りました。
渦潮セッションでは、4名の登壇者により、地域側の視点からの新しいインフラの形が紹介され、参加者と共にこれからの在り方を模索しました。
公益在団法人泉北のまちと暮らしを考える財団 代表理事/NPO法人SEIN事務局長 宝楽陸寛氏は、大阪の泉北ニュータウンで住民同士の主体的な関わり合いによる地域の再構成を目指しています。
社会福祉法人拓く理事長 馬場篤子氏は、地域で取り残されがちな弱者のニーズに応じて、住民を巻き込んだ多様な福祉サービスを展開してきました。
合同会社So-an代表社員 荒武優希氏は、空き家の再生をはじめとした東伊豆町稲取エリアのまちづくりに取り組んでいます。
NPO法人MUKU代表理事 福井宏昌氏は、農福連携事業を行いながら、障害の有無に関わらず楽しめるスポーツや農業・自然体験を提供する事業を淡路島で行っています。
参加者は4つのグループに分かれ、それぞれの活動に共感を深めつつ、今後の活動について関われること等を出し合いました。
▲インプットセッション「WEB3.0/DAOが切り拓く未来の可能性
他のセッションテーマは下記の通り
・WEB3.0/DAOが切り拓く未来の可能性
・ネイチャープレナーを、経済の主役にする ~財団法人ネイチャープレナー・ジャパン構想~
・関係人口の現在地
・こども・若者を真ん中においた地域・国づくり ~人口減少社会・日本と、人口増加社会・アフリカを繋ぐプラットフォーム構想~
・持続可能な地域社会とは何か/淡路島らしさとは何か
・地域社会の共創、地域経営の進化
・組織を超えて社会課題解決に挑む、 企業と自治体の中にいる一人一人の熱い思いから生まれた共創
▲ランチタイムのブレスト会議
また、ランチタイムには、夢舞台野外劇場前の芝生広場にて参加者によるピッチと個別ブレスト会議が行われ、新鮮な空気と輝く日差しの下で車座になって語り合いました。
▲DigDAOセッション
その後参加者全員が集合して、DigDAOセッションが行われ、プロジェクトを推進する若い世代11名のピッチが行われました。ピッチを聞いた参加者が応援するとその数によって資金が分配される「Quadratic Voting」が活用されました。
最後に、ハーベストセッションとして二日間の振り返りを行いました。
▲ハーベストセッションではそれぞれが“研ぎ澄ます”を振り返りました
▲「あいだサミット」の開催を提案する上入佐氏
今回のカンファレンスをでは、従来の中間支援組織だけでなく企業や地域の住民等多様なプレイヤーが共創のハブとして活動している実態が明らかになりました。株式会社JAL航空みらいラボ 航空事業調査研究部 兼 社内ベンチャーチームW-PIT 上入佐慶太氏から、この動きを加速する重要性を指摘し、中間支援の役割を担う人が一堂に会する「あいだサミット」の年内開催が提案され、大きな拍手を持って賛同を得ました。
Beyondカンファレンスは来年も開催予定です。ぜひご参加ください。
Beyondカンファレンス2025WEBサイト
https://www.beyondconference2025.com/
Beyondカンファレンス2024開催レポート
https://andbeyondcompany.com/news/592/