
社会課題に挑む“共創の場”とは──aBC参加で得られた経験と広がる視野
アビームコンサルティング株式会社 小池さんインタビュー
小池佳穂:アビームコンサルティング株式会社 顧客価値 戦略ユニット コンサルタント
企業の垣根を越えて社会課題に挑むプラットフォーム「and Beyondカンパニー(アンドビヨンドカンパニー)(以下:aBC)」。今回はアビームコンサルティング株式会社の小池さんに、aBCの活動に参加した経緯や、実際の取り組みで得られた気づき、そして企業として参画価値についてお話を伺いました。社会貢献活動に関心があるビジネスパーソンの方々にとって、次の一歩のヒントになるはずです。
社会課題への関心からaBCへ
──本日はお時間をいただき、ありがとうございます。まずは自己紹介をお願いします。
小池:アビームコンサルティング株式会社の小池と申します。社内では、主に営業やマーケティング領域に関わるコンサルティングを担当しています。これらの業務とは別に、aBCの活動にも参加しています。
──aBCへの参加のきっかけは何だったのでしょうか?
小池:小・中学生のころ、学校の授業の一環で海外の貧困地域の現状を知り、衝撃を受けました。それ以来、社会課題に興味を持ち、大学時代には難民支援に関わる学生団体で活動しました。就職後も社会課題に関わりたく、特に企業による社会貢献に興味があり、社内のサステナビリティ活動に自ら手を挙げて参加しました。そこで出会ったのがaBCの活動です。
自発的に参加した2つの活動
──具体的にどのような活動に参加されたのですか?
小池:主に2つの活動に参加しました。1つ目は「Beyondカンファレンス2023」のコンテンツ事務局として企画と運営、2つ目は「Beyonders」の運営です。
──Beyondersの運営とは、具体的にどのようなことをされていますか?
小池:Beyondersとは、NPOや社会起業家の方々が取り組むプロジェクトに、企業や個人が3か月間という期間で参画できる仕組みです。受入側にとっては、様々なバックグラウンドを持つ人のアイデア、スキルを活用でき、参加者側としては越境体験から学びを得て成長機会にできるといったメリットがあります。”3か月”という限定された期間、かつスキルではなくオーナーへの共感を起点に参加できる仕組みにより、越境への敷居を極力下げて社会課題へ取り組む人を増やすことを目指した良い取り組みだと感じており、アビームコンサルティングは2022年の立ち上げ時から参加しています。
私はこれまで、Beyonders運営企業の一員として他参画企業との定例会を通じた運営状況の共有やプロジェクト改善の検討、社内に対する参加者募集やイベント企画などを担当していました。
※Beyonders Webサイト:組織を越えて、社会課題解決に挑むプロジェクト「Beyonders(ビヨンダーズ)」公式サイト | Beyond the Wall
──いずれもご自身の希望で?
小池:はい、Beyondカンファレンスのコンテンツ事務局もBeyondersの運営も、自分の意志で手を挙げて参加しました。
多様なメンバーとの協業が生んだ学び
──印象に残っている活動は?
小池:特にBeyondカンファレンスのコンテンツ事務局が印象深いです。2日間開催するカンファレンスのコンテンツ企画・タイムライン設計・および開催準備から当日の運営を担い、カンファレンスの成功を支えるうえで大変重要なチームでした。
新卒1年目の終盤にあたる時期に、異業種・異世代のメンバーと協働し、コンテンツ事務局の活動に尽力したことは、学びになりましたし、苦労もありました。
──どんな苦労がありましたか?
小池:最も苦労したのは、多様なバックグラウンドを持つメンバーと、限られた時間でプロジェクトを推進する難しさです。Beyondカンファレンスの準備期間は約3カ月と短く、実行委員会メンバーの多くは本業の合間に参加していたため、当初立てた計画がその通りに進まないことが頻繁にありました。さらに、会議の度に新しいアイデアが次々と出てくるなど、状況が常に変化する環境で、どのように意思決定し、整理しながら前に進めるかが大きな課題でした。
こうした状況を踏まえ、まずは「最低限必ず決定すべき内容・期限」を明確にし、それ以外の部分は状況に応じて柔軟に組み替える方針に切り替えました。また、トピックごとに意思決定のキーパーソンを特定し、その方と早い段階で合意形成を進めることで、変化に左右され過ぎず前進できる体制を整えました。結果として、制約の多い中でもプロジェクトを動かすための実践的なマネジメント力を身につける貴重な経験となりました。
──カンファレンスが終わったときの気持ちは?
小池:初めての経験でありながら、重要な役割を担うチームの中核メンバーとして活動したことは、大きな挑戦でした。そのため、カンファレンスが無事に終わったときには、非常に達成感を感じました。
本業へのフィードバックと社内への広がり
──その経験が本業に活かされたと感じた点は?
小池:本業では、社内外の方と協働しながらクライアントの課題解決に取り組んでいますが、その進め方に aBC の経験がそのまま活きています。
aBCでは、企業のサステナビリティ担当者や行政職員、NPOの実務者など、働き方も価値観もまったく異なるメンバーと協働する場面が多くありました。現場では、「まず動いて試しながら考えるタイプ」や「計画を立ててから進めたいタイプ」、あるいは「本業では組織の意思決定フローが厳格で、自身の裁量だけでは動けない」など、それぞれの立場によって仕事の進め方や優先順位が大きく異なります。そうした多様な背景を持つ人たちと取り組む中では、常に自分の意見が求められ、互いに納得しながら同じ方向へ進めるために、どうすればよいかを自ら考える必要がありました。
本業でも、関係者によって前提や期待が異なることは多く、まず「相手が何を大事にしているのか」を把握し、それを踏まえてプロジェクトを進めていくことが欠かせません。こうした視点を若手の段階から実践的に身につけられたのは、まさにaBCでの経験があったからこそだと感じています。
──aBCに参加して得られた個人的な成果は?
小池:立場や年齢を超えて対等な関係で対話し、共に考えるという経験を通じて、物事をより広い視野で捉えられるようになったことが大きな成果でした。普段の業務では「クライアント」と「支援側」という関係性が前提となり、役割や期待が明確に分かれています。しかし、aBCでは企業・行政・NPOなど、多様な専門性を持つ方々と同じ立場で議論し、協働することができます。肩書や立場にとらわれないフラットな対話を通じて、異なる視点に触れ、新しい発想が生まれるプロセスを実感できたことにより、自分の思考の幅が広がったと感じています。
──社内にはどんな影響がありましたか?
小池:自分自身が現場に入るだけでなく、社内のメンバーが現場に関わる機会をつくれたことも印象に残っています。aBCの取り組みを通じて社会課題に関心を持つメンバーを社内で募り、BeyondカンファレンスやBeyondersといった活動に参加する機会を社内に少しずつ広げることができたのは、成果の一つだと考えています。
──活動を通じて、社会課題への向き合い方に変化はありましたか?
小池:社会課題の解決は短期では成果が見えにくく、時間をかけて取り組む必要がある難しさを改めて認識しました。一方で、企業や個人が気軽に意見交換し、協働できる“場”や“仕組み”が持つ力の大きさも強く感じました。aBCのように立場や業界の垣根を越えてフラットに議論できる環境があることで、特に大企業のような組織でも、新しい発想や協働の可能性が広がると実感しました。
まだ模索の途中ではありますが、こうした経験を通じて、社会課題の解決とビジネスの可能性をどうつないでいけるか、今後も考えていきたいと思っています。
参加を検討している企業へのメッセージ
──参加を検討している企業にメッセージをお願いします。
小池:aBCのような共創の場に出ることで得られる価値は、実際に参加してみることで初めて実感できました。短期的な成果だけでなく、長期的な関係性や視野の広がりを得ることができ、本業でも活きてくると感じています。
こうした場に挑戦できる環境や文化があることはとても大切だと思います。aBCを通じて企業の枠を越えた学びやつながりが広がり、新しい挑戦を始める人が増えることを期待しています。
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https://andbeyondcompany.com/news/295/