
| 【INDEX】 1. 序章: 虎ノ門から始まる「Beyondカンファレンス2026」への「助走」 2. 講義: サステナビリティ経営「12のステップ」 3. 現場の声: 参加者の声とこれから |
虎ノ門ヒルズから始まる「Beyondカンファレンス2026」への「助走」
2026年1月16日、虎ノ門ヒルズに直結する社会的価値の共創拠点「Glass Rock」には、企業、NPO、行政など多様なセクターから、社会課題解決を志す実務者たちが集結していました。開催されたのは、全2回講座「なぜ今、企業は社会課題に向き合うのか ― 自社の課題と実践知を集めて描く次の戦略ー」の第1回目。
本イベントは、単発の勉強会ではありません。来る2026年5月15日(金)16日(土)、同じく虎ノ門(虎ノ門ヒルズフォーラム)で開催される「Beyondカンファレンス2026」に向けた、公式カウントダウンイベント(プレ企画)としての重要な位置づけを担っています。
「Beyondカンファレンス」はaBC主催の「共創」「イノベーション」の年1回の祭典。去年は兵庫県、淡路島で開催し、述べ370名が参加
まずは担当者レベルで「なぜ取り組むのか(Why)」と「どう進めるのか(How)」の解像度を高め、組織を動かすための共通言語を獲得する―。そのための「実践知」を共有する場として設計されました。
講師として登壇したのは、aBCの掲げる「意志ある挑戦」を体現する「aBCフェロー(第1号)」金田晃一(かねだ こういち)さん(株式会社NTTデータグループ サステナビリティ経営推進本部 シニア・スペシャリスト)。
ソニー、大和証券グループ本社、武田薬品工業、ANAホールディングス、そして現在のNTTデータグループと、5社にわたりサステナビリティ経営を最前線で推進してきたプロフェッショナルです。
本イベントで参加者を前に登壇するaBCフェロー・金田 晃一さん
なぜ今、「実践知」なのか
社会課題解決が企業の経営課題として語られて久しい昨今ですが、現場の担当者は依然として「正解のない問い」に直面し、社内で孤立しがちです。「総論賛成・各論反対」の壁に阻まれ、個人の熱意が組織の論理に押しつぶされてしまうケースも少なくありません。
本企画が目指すのは、そうした担当者が「他社の同志」と出会い、先駆者の体系化された知見を学ぶことで、自社の経営層や事業部門を巻き込むための「確かなロジック(武器)」を手に入れることです。
3ヶ月後のカンファレンス当日、経営層やトップマネジメントも交えた大きな対話の渦を起こすために、まずはこの助走期間で、現場から突き上げる「意志と戦略」の土台を固めることが、本講座の最大の狙いとなります。
当日は、メーカー、インフラ、金融、メディア、NPOなど多様な分野から30名以上が参加しました。
講座に真剣に耳を傾ける参加者
サステナビリティ経営推進の「12のステップ」

金田さんの講義の中核を成したのは、自身の四半世紀に及ぶ経験から体系化した「サステナビリティ経営推進の12ステップモデル」。これは、情報収集から計画、実行、評価、そして経営の刷新に至るまで、組織全体が有機的に連動するPDCAサイクルの全体像を示したものです。
金田さんは冒頭で、「サステナビリティ経営の主役は誰か?」という問いに対し、「全員(全部署)である」と断言。一部署の活動に留めず、いかに全社を巻き込むか。第1回目となる今回は、サイクルの「前半戦」にあたる戦略策定と浸透のプロセスに焦点が当てられました。
当日使用された資料抜粋
Step 1:社外からの情報収集(社会の予兆を掴む)
勝負の分かれ目は、「将来情報をどこから取るか」にあります。
多くの企業が同業他社や既存メディアの情報に依存する中、金田さんが提唱するのは「ベクトル・インフルエンサー」へのアプローチ。国連機関や国際NGO、ルールメイキングを行うイニシアティブ、さらには広告・クリエイティブの祭典(カンヌライオンズ等)といった異分野へ自ら足を運び、一次情報を獲得すること。そこにある「社会の痛点(ペインポイント)」や「次なる規制の予兆」をいち早く掴み、自社のリスクと機会として経営に翻訳する「インテリジェンス機能」の重要性が説かれました。
Step 2:事業計画策定(納得感のあるパーパス)
企業の存在意義(パーパス)は、美辞麗句を並べるだけでは機能しません。金田さんは、社員が腹落ちし、独自の勝ち筋が見えるパーパスの条件として、以下の3要素の欠かせない統合を提示しました。

当日使用された資料抜粋
■強み(Competence):自社にしかできない機能的価値
■文化(Culture): 受け継がれる独自のスタイルや想い
■大義(Cause):実現したい社会善(Social Good)
これらが「共感」をもって経営層・社員間でつながった時、パーパスは単なるスローガンを超え、日々の意思決定の判断基準へと昇華されます。NTTデータグループがマテリアリティ(重要課題)を改定した際も、直面するリスクと機会、そして、事業が社会の与える影響の両面から「何のためにやるのか、何を期待されているのか」を突き詰め、経営戦略と統合させたプロセスが紹介されました。
Step 3:社内への情報発信(行動変容へのナッジ)
立派な計画も、社員が動かなければ絵に描いた餅。
ここで金田さんが強調したのは、義務感ではなく自発性を促す「ナッジ(仕掛け)」です。単なるeラーニングの実施に留まらず、広告作品を用いたワークショップで「FUNファクター(楽しさ)」を取り入れたり、外部講師を招いた勉強会の実施率を各事業部の「組織評価(KPI)」に組み込んだりと、現場が動かざるを得ない、あるいは動きたくなる仕組みづくりこそが、担当者の腕の見せ所となります。
Step 5:CSV/製品・サービス提供活動(ロマンとそろばん)
CSV(共有価値の創造)とは、決して「慈善活動の延長」ではありません。
商品企画のスタート地点に明確な「社会課題解決」があるか。従来品と比較して圧倒的な社会的インパクトを出せているか。そして何より、それによって「企業価値(収益やレピュテーション)」を向上させているか。
「ロマン(社会善)」と「そろばん(経済合理性)」の両立。この厳しい基準をクリアして初めて、サステナビリティは事業の駆動力になると、金田さんは熱く語りかけました。
参加者の声とこれから
テーマごとに分かれたディスカッションの様子
講義の後半では、参加者が「情報収集」「事業計画」「社内浸透」「CSV」のテーマごとに分かれ、自社の課題を共有するワークショップを実施。企業の枠を超えた熱量の高い議論が交わされました。
参加者からは、視座の転換や次への意欲を示す感想が多数寄せられています。
> 「サステナビリティ経営の推進に関して、体系的にプロセスを学んだことがなかったため、目から鱗でした。全部署が主役であり、プロセスのいずれかに関わっていることを再認識し、自身の立ち位置や今後何のために働くのかを見つめ直すよいきっかけとなりました」(大手食品メーカー 経営企画部 担当者)
> 「金田さんの12のステップが印象に残りました。企業研修やワークについて、皆さんの企業と共創していきたいです」(教育事業関連 起業家)
本イベントが生み出したのは、単なるノウハウの共有にとどまりません。
社内で孤立しがちな担当者が「他社の同志」と出会い、本音の悩みをぶつけ合えたこと――その熱量と交流こそが最大の価値でした。正解のない問いに対し、自社のリソースをどう活用して社会を変えていくか。参加者一人ひとりが、自らの意志を込めた「仮説」を持ち帰る、確かな手応えのある場となりました。
ここから始まる変革の波は、次回(第2回:2月16日開催)の「社会貢献活動」「情報発信」「外部評価」というテーマへ続き、さらに加速していきます。そして、これらの議論と実践知の蓄積は、2026年5月15日・16日の「Beyondカンファレンス2026」にて、より大きな共創のうねりとなってスパークすることでしょう。
当日の集合写真
(文:aBC事務局/芳賀 千尋)
▼関連リンク
■2/16 (月)15:30-18:00
第2回【講義+実践型ワークショップ】なぜ今、企業は社会課題に向き合うのか ― 自社の課題と実践知を集めて描く次の戦略ー
申込:https://peatix.com/event/4776128/view
■「Beyondカンファレンス2025」開催レポート
https://andbeyondcompany.com/news/754/