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COLUMN
2026.04.15

【シリーズ:「共創」という楽器の鳴らし方vol.4】企業サステナビリティ担当者と共振する10のチューニング・ガイド:④情報の展開力(理解、整理、翻訳、発信)

立場や組織の垣根を超えて「共創」を進めたいと願っても、組織を代表する以上、私たちはそれぞれの論理や限界という「硬い壁」に直面します。 しかし、この壁の中で孤独に戦う必要はありません。「熱意やナレッジの交換」というつながりの力でその壁を「響かせる」ことができれば、挑戦と応援のエコシステムはより豊かになっていくはずです。

今回、こうした「壁を響かせる実践知」を皆様とシェアする新連載【シリーズ:「共創」という楽器の鳴らし方】を企画しました。これは一方通行の情報発信ではありません。受け取った皆様からの現場のリアルな「アンサー(知見)」を募集し、次の連載者へとバトンをつなぐ「知のペイフォワード・リレー」を目指します。

本連載のトップバッターとして新aBCフェローの金田晃一さんを迎え、現職のNTTデータグループのほか、ソニーや武田薬品工業など5社・26年にわたる実践知から、企業担当者とNGOが「共振」するための10の作法(チューニング・ガイド)を紐解きます。

第4回のテーマは、NGO担当者に求められる「情報の展開力(理解、整理、翻訳、発信)」について。大和証券グループとJFS(ジャパン・フォー・サステナビリティ)との連携経験から紐解きます。

【筆者略歴】金田 晃一さん(多摩大学サステナビリティ経営研究所客員研究員/aBCフェロー)

ソニー渉外部通商政策課、在京米国大使館経済部通商政策担当、ブルームバーグテレビジョン・アナウンサーを経て、1999 年以降、ソニー(再入社)、大和証券グループ本社、武田薬品工業、ANAホールディングス、NTT データグループの5 社にてサステナビリティ経営を推進。日本経団連・社会貢献担当者懇談会座長、日本NPO センター理事、現在は、国際協力NGO センター(JANIC)理事、日本ソーシャル・イノベーション学会理事、多摩大学サステナビリティ経営研究所客員研究員を務める。and Beyondカンパニーの1号フェロー。

企業とNGOの連携による日本初の「サステナビリティ講座」

2006年10月、大和証券グループ本社と大和証券投資信託委託(現ダイワアセットマネジメント)は、ジャパン・フォー・サステナビリティ(JFS)と連携し、大学生を対象とした「ダイワ-JFS青少年サステナビリティ・カレッジ」(以降、「サステナビリティ・カレッジ」と表記)を開講した。公募で集められたサステナビリティに関心のある大学生約40人に対して、月1回の頻度で4年制大学よろしく4年間で計48回、毎回異なる外部有識者が講師となってサステナビリティの諸相を包括的に解説するプログラムである。大和証券グループ本社セミナールームを会場として活用し、運営費には、「ダイワ・エコ・ファンド」の純資産額を参考に算定された寄付金が充てられた。企業とNGOが連携して「サステナビリティ」という看板を掲げて講座を展開するという意味では、日本初の試みであった。

テーマ型投資信託の販売による社会インパクトの二重創出

このプログラムを設定するに至った背景について触れておきたい。私が入社した2005年1月当時[1]、大和証券グループは様々なアプローチで社会的責任投資(SRI)の普及・促進を通じて持続可能な社会づくりを目指していた[2]。①サステナビリティをテーマとした投資信託の販売を中心としたビジネスによる「(現在の表現を使えば)CSV活動」が中心的な活動ではあったが、その前提として、②環境、人権、そして、コンプライアンスや情報開示を含むガバナンスの分野で、自らが責任ある事業プロセスを実践する「CSR活動」や、③経済・金融教育分野への支援を通じた「社会貢献/フィランソロピー活動」についても積極的に取り組んでいた。

しかし、③については、SRIの普及や同業他社とのブランド差異化などの観点での企業価値向上に向けた、より高い戦略性が求められていた。そこで、①で示した「サステナビリティをテーマとした投資信託の販売」から得られた収益の一部をそのテーマに関連する課題解決に取り組むNGO/NPOに寄付する、というスキームを活用し、2005年以降、3年連続で、新たな3つの戦略的社会貢献プログラムを策定した[3]。時系列で言うと、そのうちの2つ目が、今回紹介しているJFSとの「サステナビリティ・カレッジ」にあたる[4]

そして、これら一連の動きが2006年5月大和証券投資信託委託による、日本企業初の責任投資原則(PRI)署名というシンボリックなアクションへとつながる。大和証券投資信託委託の兜町オフィスに、大和証券投資信託委託専務取締役の他、大和総研主任研究員、そして大和証券グループ本社CSR室次長の私が集まり、さらにはUNEP FI特別顧問にもご同席いただき、署名に向けた”作戦会議”を開いたことを今でも鮮明に覚えている。

情報をコンセプトとして理解し、整理する力

さて、プログラムに戻ると、JFSは、自らが理解するサステナビリティのコンセプトを「容量・資源」「世代間・地域間の公平性」、「多様性」、「意志・つながり」の4つに整理し、それぞれを各年の「サステナビリティ・カレッジ」の年間テーマに据えることで、必ずしも環境分野に限定しない”サステナブルな社会の姿”を将来のサステナビリティ分野でのリーダーになるであろう大学生に提示してくれた。また、JFSスタッフや外部講師との事前打ち合わせの段階で、私自身も多くを学んだ。企業のCSR・サステナビリティ担当の場合、「経営のレンズからサステナビリティを観ている」ため環境や人権といったイシュー、すなわち「what:やるべきこと」に目が行きがちであるが、対照的に、JFSは、「サステナビリティのレンズから経営を観ている」と感じた。今、思い返してみると、「意志・つながり」の「意志」とは、インパクト投資の文脈でよく使われるintentionであり、「つながり」とはコレクティブに実施することと理解できる。。2015年9月に国連総会でSDGsが採択されることになるわけであるが、その9年前から、バックキャスティングやコレクティブ・インパクトなどの概念を「サステナビリティ・カレッジ」の主催者特権で大学生と一緒に学んでいたことになる。

大和証券グループ CSRレポート2009 P.22より

情報を翻訳し、発信する力

また、48回にわたる講義録は、日本語で作成され、英語に翻訳され、JFSが持っている海外インフルエンサーのネットワークを通じて発信された。このあたりの組織としての力量は当時として抜きん出るものがあった。特に2人の共同代表は、元ソニー社会環境部企画室室長とアル・ゴアの「不都合な真実」の翻訳者ということもあり、スタッフを含めて、組織としての情報の展開力、すなわち、理解・整理・翻訳・発信の分野で卓越したケイパビリティをもったNGOであったと改めて感じている。

第1期「容量・資源」講義録第2期「世代間・地域間の公平性」講義録第3期「多様性」講義録第4期「意志・つながり」講義録

JFS自体は、2018年7月31日に活動を休止しているが、当時の講義録は、アーカイブ化され、現在もすべてダウンロードできる。今から20年前のサステナビリティ論は現在とどう違うか、あるいは変わっていないのか、まとまった形の議事録に触れてみることで新たな発見があるかもしれない。

今回の問い

NGO/NPOの「情報の展開力(理解・整理・翻訳・発信)」について、企業のサステナビリティ担当者として特に印象に残っている、あるいは不足を感じた場面はどのようなときだろうか。

いかがでしたでしょうか。金田さんは今回、NGOの「情報の展開力」の重要性について論じていますが、さて、翻って、企業側にも情報を正しく受け取り、社内に展開する力が問われるのではないでしょうか。皆さんの現場の声をぜひお聞かせください。

本連載は、皆様からの「声」で完成します。「自分たちの現場ではこうしている」「逆に企業にこうしてほしい」 そんな皆様のアンサー(知見)をぜひお寄せください。

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参考文献・注:[1] 大和証券グループ本社では、2004年7月にCSR室を組織し、CSR経営の経験者をネット上で公募していた。それに応募する形で、2005年1月1日付でソニーから大和証券グループ本社に転職した。

[2] 大和証券グループ持続可能性報告書2005(P.8-11)には「社会的責任投資への取り組み」が特集されている。

[3] 3つの事例とは以下の通り。
①「ダイワSRIファンド助成プログラム」(「ダイワSRIファンド」より):2005年11月開始、パートナーは市民社会創造ファンド、生命、生活、尊厳など、人の「いのち」に関わる社会課題に取り組むNPOを支援する
②「サステナビリティ・カレッジ」(「ダイワ・エコ・ファンド」より):2006年10月開始、パートナーはJFS、大学生向けにサステナビリティ講座を提供する
③「ダイワCI生物多様性保全基金」(「ラッセル・インベストメント世界環境テクノロジー・ファンドより」):2007年11月開始、パートナーは、コンサベーションインターナショナル・ジャパン、世界7か国8地域の自然遺産周辺の違法な森林伐採者をエコツーリストに変えるためにトレーニングを提供する
詳しくは「環境CSR宣言 企業とNGO」第2章企業とNGOの関係 P.39-55(金田)日本経済団体連合会 自然保護協議会編 同文館出版(2008.11.20)または、大和証券グループCSR報告書2010 P.75-79参照

[4] サステナビリティ教育について言えば、この「サステナビリティ・カレッジ」とは別に、私自身も慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科に新設された「ソーシャル・ファイナンス」講座の初代講師として2年間SFCで教鞭を執った。これは、業務時間中のプロボノ活動にあたるため、大和証券グループ本社から見ると講師派遣という社会貢献活動に位置付けられる。

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